第1回レポート中島武社長×柏原光太郎氏
「きちんとした」飲食店を提供することが、最新食トレンド。

2019.8.23 / Report

文責:丸の内食・コトデザイン研究所 事務局 松田龍太郎(株式会社oiseau)

7月23日(火)より、「丸の内 食・コトデザイン研究所」が開講。第1回目の講師として、全国で350店舗以上の飲食店などを手がけ、常に新規業態をつくり、最近では旅館業にも展開をはじめ、多くのお客様の期待に応えている際コーポレーション中島武社長と、その中島社長からのご紹介により、某出版社に勤める傍、できるだけ広い範囲で飲食業界の情報を集めつつ、ご自身も「日本がストロノミー協会」の会長を務められている柏原光太郎氏を迎え、「最新食トレンドを取り入れた経営学」をお話しいただいた。 その講座の中で、お二人の話題の中心に、「現場感覚」が大きかったことは、心を揺さぶられた。

まず中島氏がおっしゃった「本当の街のレストランは、実に変わってきている。簡単なことをいうとフランスのようなシェフ帽子を被ったシェフが、レストランの中を闊歩している時代は、変わりつつあります。料理人のファッション、考え方もだいぶ変わってきている。つまり、世の中の街場では、『お客様のために料理を出そう』という付加価値はなくなりつつあり、『自分たちの幸せのために』『喜びのために』、そういう気持ちを根底に、深いものを持ちつつ、その志を持っていないと、良いものが作れないと思っています。」という言葉をいただいた。 今日(こんにち)において、飲食ビジネスの基本である「儲かること」「どんな美味しいものをお客様に提供できるのか」よりも、「食に対する接し方」、何が良くて、何が悪くて、ということを考えていかなければならない時代になったということを肌で感じている意見だった。

その「現場感覚」は、彼が特に重要視している「バイヤー的視点」にある。中島社長は、現在も日本、そして海外の各地を、自ら足を向けて、食材や飲食に関わる部材(お皿や内装にまつわる部材など)の仕入れを行なっている。例えば、海外での、食の見え方として「日本の食はミシュランの星も多く、すごく進んでいると皆さん思っているけど、実際は国際的な色の動きとしては、まったく進んでいないと思っている。例えばアメリカのサービスは日本とは全くちがい、食材もオーガニックの進み方がすごいです。決定的に、食べ手と作り手がイーブンの関係で成り立っています。

つまり『お客様のために』というそんな時代から脱却して、自分の作りたい、求めているものを徹底的に考えている。」と中島社長は感じているのだ。日本の多くの若手シェフが、海外のシェフとの交流や、そうしたイベントを多く仕掛けている、現在の、日本の飲食業界の動きを見ていると、時代はひしひしと変化していることがわかり始める。



一方、柏原氏が考えているのは「食べ手の変化」だ。食べ歩きといった「娯楽としてのレストラン」というだけではなく、現代において、「もっと広い食の世界を知らせたい」とレストランもお客様も思いはじめている実情があるからだ。料理人、飲食店の方々に、広い世界を知ってほしいと思っている時代だからこそ、柏原氏も確信を得ていると考える。

そうした中、今回のもう一つのテーマである「地方食材」について。両氏が思う「地方食材との接し方」について、それぞれの視点では、「作り手」と「食べ手」のそれぞれの接し方が際立ってお話しされた。

「現場感覚」。

「我々が一番敏感になるのは『料理のメニューを作ること』だけど、結局は、さきほど申し上げた『原材料』のことを知らないと作れないのはわかるかとおもいます。だから仕入れの際に、なんでも「キロいくら」という感覚をお持ちですよね?けれど現地まで食材を仕入れに行く、リサーチに行くと、そこに漁港があって、市場があって、さらにその地域の皆さん、特に生産者の顔が浮かばないでしょうか。彼らから買って、喜んでくれるイメージ。そして、その食材を僕らが使って「風景ごと」、お客様に知ってもらう。そういう風景も全部見てきてこそ、その品物に愛情が生まれます。」(中島氏)

確かに、自分で買い付けしないものは、愛情がわかない。値段などの基本情報も頭に残っていない感覚があるはず。それだけ中島社長が力を入れている「バイヤー的視点」「買い付けの行為」が地方食材を自分のお店でモノにしていくことの重要性である。

僕らが地方食材を、どのようにレストランで提供しているのか。よく生産者の方に感謝しろと言われますし、親しくしていると、あんな大変な思いをして、という気持ちも生まれてきますが、現段階では、作り手の生産者の高齢化、後継問題ふくめ、すべての日本の食材も減りかけている実情。下手すると、すべて海外の食材になる可能性もある。まずは、日本の津々浦々の食材を確認し、知り合って、そこのものを大事にして、世界に通じていかないといけない、それが地方食材の活用するすべだと中島社長はおっしゃった。その気構えが、際コーポレーションを引き立て、伸ばしているモチベーションではと感じる。

こうした変化し続ける、食べ手の環境も、飲食店に対する影響も少なくはない。食べ手も同時に変わり始めている。しかし、地域食材を自ら発掘して、出会って、仲良くなってというそういうことを含めて、トレンドと、地域食材を含めた地域活性化についての可能性を秘めている事実も否定できない。 今までの安かろう、まずかろうではなく、良いものが、質の高いものを取り寄せてもっと良いものにしていこうという感覚。ある意味「僕らはお金を払って食べさせてもらおう」というイメージだったが、そこから「僕らも一緒に食べていこう」という方向性が出来始めている時代において、そういったところを広げていく、もしくは気づかせてくれるレストランを探すことで、もっと幸せになれるのでは?と感じているのが柏原氏が感じる、最新食トレンドだ。

最後に、中島氏が、「飲食店をやっていて、数多くのお客様に価格の問題を解いています。全部のお店に通じて、仕入れについて「値段を叩け」をやめると、良いものは手に入ります。安くしろ、と言われて良いものがはいるというのはない。その食材を使えないと、お店は維持できない。またそんな労働環境を作ることも大切。そしてお客様に対して、きちんとした金額をもらうサービスをしていかなければならない。高い食材を、勇気を持って仕入れること。きちんとお客様に提供すること。これからはこうなってはいけないなとおもっている。」という、飲食の「新基準」をまとめの言葉とした。

消費税10%増税に向けた、飲食店における価格変動もあるなかで、多くの日本のレストランは、値段が高くなる傾向がある。けれども、質の高い地方食材を仕入れて、きちんとお客様に支払ってもらうサービスをすることは妥当だ。妥当な理由があるお店には、そんな値段を見て、お客様は「高い!」という人はいないし、高いと思ったら、食べに来ないのが実情であろう。

そうした飲食店を増やしていかなければならない。そういう価格帯をだせる飲食店を出していく。美味しいものをたべて感謝していただける、「きちんとした」飲食店を提供することが、いまの「最新食トレンド」なのかもしれない。