第2回レポート ドミニク・コルビ氏×ルカ・ファンティン氏 
日本の食材こそ、日本の宝。外国人2大シェフが挑む「日本」という土地、国。


2019.9.9 / Report

文責:丸の内食・コトデザイン研究所 事務局 松田龍太郎(株式会社oiseau)

第2回の講座を開くにあたり、ドミニク氏、ルカ氏ともに、数度ほどお打ち合わせする機会がありました。その中で、一番感じ、そして彼らが大切にしているのは、「ひとつひとつの食材のストーリー」です。

コルビ氏はそれを「まず、日本の地方に足を運び、良い食材を探しに行くこと」と、シンプルに、そして料理人としての「現場感」を話した。これは第1回でも際コーポレーションの中島社長が、この講座で話したことだ。そしてその行動が、これまでの飲食店で起きていた食材の仕入れ方を変え、飲食店のシェフが生産者から直接食材を仕入れることにつながり、現在の飲食店のシェフの「当たり前」としてつながり、中には、自分で農園を作り、自らの食材を提供する飲食店も、一般になりつつある状況である。そしてコルビ氏は、圧倒的に、その環境に馴染むように、自らを「日本」という土地に溶け込ませ、これまで最高峰と呼ばれるクラシックフレンチの王道を変化させながら、現在の「フレンチ割烹」という取り組みまでつなげている様は、新しく、なおかつ古き良き時代を踏襲しながら、現代を表現しているのだろう。

一方、ルカ氏は、イタリア人であることを軸に、日本の食材を使って、その土地、つまり「日本でしかできないイタリア料理」を試そうとしている。料理、味付けを一からやり直し、そのためには、「55」と言われている、現在の食材の仕入れ先と直接やりとりしながらも、お米はここ、マッシュルームはここ、和牛はここと、ひとつひとつの食材にこだわり、その食材にあわせて、自分が培ってきた経験と調理方法、味付けを再検討し、料理を提供しているのだ。この評価が、日本の外国人シェフとして唯一「アジアのベストレストラン50」にランクインしている実力であると認識している。

そのように、食材にこだわるようになればなるほど、シェフは、そのストーリーを提供するお客様に「伝えたくなる性(さが)」になるのは否めない。ルカ氏も、「三ツ星級の大型レストランは堅苦しく見える。ブルガリも最初は一緒だった。それをどうやって、やわらかく接客できるか。」ということに気を揉んだようだ。そこからますレセプションスタッフからホールスタッフ、キッチンスタッフが同じスタイルで接客すること、なにより「笑顔」で接することを徹底することを考えた。まるで自宅に遊びにきていただいたような心がけが、お店の品格をあげ、来るべきお客様も、自ずとそのスタイルに溶け込み、日本の、旬が豊富に入り込んだメニューに舌鼓を打つ、そうした取り組みや環境づくりを作り上げることに苦心されていると感じた。

そして、コルビ氏は、それを自ら調理方法を見せながら、時折会話に参加し、ワインや日本酒とともに、あわせて提供する、いわゆる日本料理における「割烹」というスタイルに行き着いたのだろう。ただ、割烹に至っては、多くのお客さまを全て対応はできない。10人未満のお客様に、最高最善のサービスを提供することが、コルビ氏が提供する、最高最善の答えではないだろうか。

 コルビ氏は、現在47都道府県中、「46都道府県」に足を運んだそうだ。多くの食材と出会ったほかに、その地域の風土、そしてその食材を育てる生産者や加工品事業者など、多くの「食にまつわる人材」との出会いであった。そうした出会いが、新たな食材との出会い、その場で起きるイベントや催し、また現在活動されている「丸の内 シェフズクラブ」への試みにつながっていくのだろう。またその感覚を大切に、活動に移されているコルビ氏の今後の活動も気になるところだ。

 またルカ氏は、日本で自らの名前を冠したレストランを作り上げて今年で10年、いかに地方の生産者が重要かを痛感しているとおっしゃった。手に入れた地域の食材を、自分なりに解釈し、料理に生かすことが、食に携わるものとしての楽しみの一つという感覚から、これからのシェフは、「どれだけ地方に関わり、良い食材と出会い、調理に向かうか」が試される時代となり、そしてそういうシェフでなければ、世界に評価されていかないとも聞こえてくる。事実、30、40代のシェフたちもまた、都心ではなく地方や、自らの地元での出店、また世界中のシェフたちとのコラボイベントも多く散見される。シェフが発揮していくコミュニケーションは、より食材を作り上げる生産者、ひいては、その食材を作り上げる地球環境含め、大きなチャレンジが、スッと見えてとれる、2大外国人シェフの大きなメッセージであると思う。