第1回 レポート 本田 直之 氏 × 浜田 岳文 氏 

いま求めるレストラン像には、正解がない?
労働環境が提供する、新たな飲食業界の変化。


2020.01.15 / Report
文責:事務局 松田龍太郎(株式会社oiseau)

第2期第1回がスタートしました。今回も6ヶ月毎月実施する「丸の内 食・コトデザイン研究所」、第1期は丸の内シェフズクラブのシェフをメインゲストに、多種多様なサブゲストをお招きして、「丸の内から食を考えていく」トークセッションが繰り広げられました。

そして第2期は、第1期から、客観的に食を見つめている人、現在の食の状況を伝えようとしている人、その食をツールに活動・ビジネスにしている人にスポットをあて、トークゲストを招聘させていただきました。

まず第1回目はフーディーズ(美食家)として名高い本田直之氏、浜田岳文氏にトークセッションを依頼し、「世界から見たこれからの、日本のレストランのあり方とは?」をテーマに登壇いただきました。

彼ら2名が日本、そして世界各地のレストランを巡り歩き、その目や舌、雰囲気で感じたレストランの状況を「労働環境」「地方活性化」「リピートする要員」といったサブテーマから、とても詳細かつ丁寧にお話しされていたことが印象的でした。「美味いには理由がある。」そこには良い食材、見たこともない調理方法を提案していたレストランやシェフではなく、もの凄い勢いで変わりつつある環境が情報として変化していることに気づかせてくれる。

 例えば「労働環境」。特にドイツは労働法が変わり、定休日が多くなり、営業できる時間も少なくなった。その影響でランチ営業がなくなり、そうした営業の中でビジネスが成り立つ状態で飲食店を経営しなければならなくなったのである。単においしいものを食べさせたい、自分の欲求としておいしいものを作りたいといった部分だけでは、飲食店を経営できるビジネスモデルではなくなりつつある現場が生まれている。

 日本における労働環境の変化も、料理を提供するシェフ、そしてそのシェフが食材を仕入れようとする生産者の立ち位置にも影響を及ぼしている。シェフはより直接的に食材を仕入れるため、地方や国外へ旅をし、生産者に出会い、できるだけ良いものを手に入れようとしている。そして生産者もまた、これまで、市場(しじょう)を通じて、適正な価格で出荷していた食材を、より美味いものを、市場価格ではない、できるだけ限定的で、よりよいものを提供しはじめている。場合によっては「シェフが欲しがるものをわざわざ作って」提供するというサービスまで行っている。生産者も、「美味しいものが取れたから使って欲しい」から「料理でこういう風に使われる野菜なら作れる」といった、「マーケティング要素」が必要になってきているといえるのだろう。またそのアクションは、結果消費者に価格帯含め影響しているのは確かだ。一人2〜3万円するレストランもザラである。けれど、提供されるメニューやサービスをしたって、リピートする理由が確実に生まれ、支持される理由を作っているのも事実だ。

だからこそ、日本の地方における食の生かし方、食べ方について、より「ストーリー化(食材の生まれ方、提供の仕方など)」されている現状が生まれているのではないか。その食材をつかったのかという理由、そこにしかなく、その土地でしか料理できないこと、旬を含めたタイミングといった「背景」を大事にしているのだ。そのためにフーディズは、わざわざその場に足を運び、食を通じて、その土地やそこにいる人を感じている。

 単なる「食通」ではない、その土地を選択し、食事を食べ、そこに泊まり、語らい(ときにはサウナ?で整えたりするなどして)、どっぷりその風土に浸かって、そしてなにより明日からの人生を楽しもうとしている姿を感じた。そんな人たちが、食を通じて、都会を、地域を見つめていることが新鮮である。いや、フーディズはすでにその状況下で、シェフや生産者の意識を変え、さらにそうしていこうという気構えを感じたのだ。すでにわかった人間はその方向に進んでいるよ、と。

一方、都会のレストランの立ち位置を見つめなおした場合、同じことをするのが上策なのか?いわゆる「業態開発」で新しいレストラン像を探すのは、余裕がなく、それ以上に時代は早く流れていく。果たして28時までの営業が正しいのか。良い食材を大量供給するのが正しいのか。人口が減り、新たな人材確保が難しくなってきている今、雇用状況、ビジネスモデル含め抜本的な「業務開発」が必要だと感じる。外国人の雇用、時間内労働、提案の仕方。飲食店が提供するビジネス・サービスとは。これ以降5回の展開もまた楽しみです。